大阪府の刀剣施設/ホームメイト
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江戸時代において政治の中枢であった江戸に対し、「天下の台所」との異名を取っていたほど、商業や物流の中心地であった大坂の地。物資のやり取りや人々の交流が盛んであったため、文化などが大いに発展しました。このような大阪の歴史を学んだり体感したりできる博物館などの施設が、現在の大阪府内には多数あるのです。それらの中でも刀剣の所蔵、及び展示のある施設についてご紹介します。
豊臣秀吉と大阪城を徹底的に知る!「大阪城天守閣」

現在の大阪城
言わずと知れた天下人「豊臣秀吉」が、1583年(天正11年)に築城した「大阪城」(大阪市中央区)。
「豊臣家」の本拠地として用いられていた同城は現在、国内外を問わず多くの観光客が訪れる人気スポットとなっています。そんな大阪城の天守内部にあるのが、「大阪城天守閣」と称される博物館です。
8階建てである同館には、地上50mに位置する最上階から大阪の街を見渡せる展望台の他、各フロアに豊臣秀吉の生涯や大阪城関連の資料が展示されています。
大阪城天守閣における所蔵品の中で特筆すべきなのは、重要文化財の「大坂夏の陣図屏風」です。こちらは、1615年(慶長20年/元和元年)に豊臣家が江戸幕府と戦った「大坂夏の陣」の様子を描いた作品。大阪城天守閣の5階には、この屏風における各場面を解説したパノラマビジョンや、同合戦をミニチュア人形で再現したコーナーがあり、大阪城天守閣における見所のひとつです。
大阪城天守閣は、この大坂夏の陣図屏風を始めとして、戦国武将達が所用したと見られる甲冑など、約10,000点にも上る様々な種類の文化財を収蔵しており、刀剣もそのひとつ。名刀収集家でもあった豊臣秀吉が拠点としていたお城らしく、同館には日本刀の収蔵品も数多くあります。その名刀コレクションの中から展示される刀剣は、約2ヵ月ごとに入れ替えられているため、何度訪れても楽しめる刀剣施設です。
大阪城天守閣 主な刀剣収蔵品

- 銘
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(表)
津田近江守助直
(裏)
天和二年八月日
江州高木
- 時代
-
江戸時代
- 鑑定区分
-
大阪府指定
有形文化財
- 所蔵・伝来
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大阪城天守閣
本刀を作刀したのは、「大坂新刀」を代表する名工のひとり「近江守助直」(おうみのかみすけなお)。近江国(現在の滋賀県)であった同工は大坂へ出ると、大坂新刀随一の作刀技術を持った「津田越前守助広」(つだえちぜんのかみすけひろ)に師事。
津田越前守助広は、「濤瀾乱刃」(とうらんみだれば)と称される華やかな刃文(はもん)を考案したことで高い人気を博した巨匠。本刀には、そのような師の作風が存分に反映されており、匂口(においぐち)が明るく冴えた刃文が特徴です。
大阪の歴史を丸ごと学ぶ!「大阪歴史博物館」

大阪歴史博物館
大阪城天守閣もある「大阪城公園」(大阪市中央区)の南西に位置しているのが、「大阪歴史博物館」(大阪市中央区)。
同館は、大阪市が掲げた「難波宮跡と大阪城公園の連続一体化構想」の一環として建設され、2001年(平成13年)に開館しました。
「難波宮」(なにわのみや)とは、飛鳥時代から奈良時代の難波に造営された都城(とじょう)、及び皇居の総称。
同館では10階の常設展示室に、この難波宮にあった「大極殿」(だいごくでん/だいぎょくでん)が原寸大で復元されており、直径70cmもある円柱が並ぶ様などからは、荘厳な雰囲気が感じられるのです。
大阪歴史博物館は、7階から10階までが常設展示室となっています。階を下りるごとに時代も下がり、9階は「大坂本願寺」(おおさかほんがんじ)の門前町であった室町時代から大阪城の築城、そして天下の台所と称された江戸時代における大坂の街並が観られます。さらに8階には原寸大の発掘現場が設営され、7階では、どこか懐かしさを感じる大正時代から昭和時代初期、いわゆる「大大阪時代」(だいおおさかじだい)の風景が再現されているのです。
また同館の常設展示では、自分の手で触れて体験する「ハンズオン」展示が随所に施されており、子どもから大人まで、楽しみながら大阪の歴史が学べる施設であることも大きな特色と言えます。
加えて6階の特別展示室では、大阪歴史博物館の数あるコレクションの中から、多種多様な名刀が展示される企画展などを開催。刀剣ファンの人は、同館の特別展や特集展示の情報を小まめに確認しておくと、思いがけない刀剣との新たな出会いがあるかもしれません。
大阪歴史博物館 主な刀剣収蔵品

- 銘
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―
- 時代
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昭和時代
- 鑑定区分
-
―
- 所蔵・伝来
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大阪歴史博物館
本槍は「御手杵」(おてぎね)、及び「蜻蛉切」(とんぼきり)と共に「天下三名槍」(てんがさんめいそう)のひとつに数えられる名物、「日本号」(にほんごう/ひのもとごう)の「写し」(うつし)です。

綾杉肌
本槍を手掛けたのは、大阪府出身であり、1971年(昭和46年)に「重要無形文化財保持者」、いわゆる「人間国宝」に認定された名工「月山貞一(二代)」(がっさんさだかず)。
月山貞一は、「月山家」に代々伝わる地鉄(じがね)の文様「綾杉肌」(あやすぎはだ)の名手であるだけでなく、日本における5つの地域に伝わる作刀技法、「五箇伝」(ごかでん)すべてを身に付けていたほどの優れた刀工でした。
全長約3mにも及ぶ大身槍(おおみやり)であるこの作品は、正確に再現された刀身(とうしん)はもちろん、美しい青貝を用いて作られた柄(つか)や、樋(ひ)に施された見事な「倶利伽羅龍」(くりからりゅう)など、見所が多い傑作です。
刀剣の研磨を体験!「かたなの博物館」
日本刀の美しさを維持し、後世に伝えていくために不可欠である「研磨」(けんま)の作業。実際に観たり、ましてや自分でやってみたりする機会はなかなかありません。しかし、そんな刀剣研磨について学び、自らも体験可能な場所が大阪府内に存在します。
それは、大阪市平野区にある「かたなの博物館」。同館は、1993年(平成5年)から「平野の町づくりを考える会」が中心となり、「平野・町ぐるみ博物館」と称するミニ博物館運動の一環で開設された博物館です。平野・町ぐるみ博物館では、同区の歴史などを学べる場所として、平野区の様々な店舗や個人住宅の一角を開放しています。
そのなかで「かたなの博物館」は、刀剣研磨を行う「御刀研處 真澄庵」(おかたなとぎどころ ますみあん)に併設されている刀剣関連施設です。同店では刀剣研磨の他にも、「鎺」(はばき)や「白鞘」(しらさや)といった「拵」(こしらえ)の制作、お手入れ方法など、日本刀にまつわる相談や質問にも応じています。
同館は、そんな真澄庵の店舗内におけるスペースにあり、「江戸新刀」(えどしんとう)の名工として活躍した「石堂是一」(いしどうこれかず)の刀や、「古備前派」(こびぜんは)と極められる大磨上げ無銘(おおすりあげむめい)の刀などを展示。研磨に用いられる砥石も置かれており、実際に触れることもできます。
さらには、研師(とぎし)であり庵主を務める「真津仁彰」(まなづひとあき)さんによる刀剣研磨の様子を見学できるだけでなく、研磨工程の一部を体験することも可能。刀剣をただ鑑賞するだけでなく、どのように磨き上げられて美しくなるのかを知りたい人に、ぜひ足を運んでいただきたい場所です。
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